YUIを聞いていたらもう普通の恋愛はできないんだと思って泣いた。
思えば、おじさんとしか恋愛してこなかった人生だった。
思春期真っ只中の多感な時期を過ぎたらもう、おじさんしか愛せなくなっていた。
おじさんおじさん連呼しているが、正直、私は彼らのことをおじさんだなんて思っていない。
大好きだし、愛していた。
だって、
いつだって彼らは私のヒーローだった。
友達に絶交したいと言われた夜、大泣きして深夜に家に行ったら、泣き止むまで頭を撫でてくれた。
人生経験の豊富さから、私を救うようなことを言って慰めてくれた。
お前の人生マジでまだまだこれからだから。って絶対的な説得力で私を励ましてくれた。
大好きだった元彼と別れて、その次の彼と付き合った時に「元彼のことが忘れられない」と言ったら「お前はいつかその男を超えるから安心しろ。」と言われた。
死ぬほど嬉しかった。
「俺が超えるから」じゃなくて「お前は超えるから」と言われたことが死ぬほど嬉しかった。
5ヶ国語喋れる男と付き合った時、「英語が喋れない」と泣きついたら「俺が喋れるようにしてあげるから」と言ってくれた。
とにかく、いつだって。そう、いつだって。
彼らは私に新しい世界を見せてくれた。
勉強の仕方を教えてくれた。
大学をサボって、昼間から二人で部屋でゴロゴロして、公園に行くような恋愛はできなかったけれど。
お金がなくてカップラーメンをすするような恋愛はできなかったけれど。
でも、でも。
食べたことない部位の焼肉を食べてきたし、
大学生が絶対いけないようなバーやホテルにだって行った。
そう、これでいいんだと思う。これで良かったんだと思う。
彼氏の誕生日を祝った日、
その日一日で二人で2桁万円飛ばした。
手作りケーキを作ったり、バルーンを部屋で飾ってサプライズ!みたいな恋愛はしてこなかったけど。
だって私どうせケーキなんて作れないし。
これで良かったんだと思う。
焼肉の焼き方。見たことも食べたこともない料理。
学生なのに一般料金で予約されてた映画。
値段を気にしない注文。
お店は必ず電話をかけてから行く。
絶対に並ぶことのないデート。
煙草の香り。
口紅がつかないように気にしたワイシャツ。
思い出はいつも夜だった。夜か、朝だった。
昼の思い出なんて、片手で数えられる。
それが当然だと思っていたし、それでいいと思っていた。
でも、yuiを聞いた途端、
死ぬほど、動揺した。
夏が来るから海へ行こうよ。
って、なに。
え、海、行っちゃうの?マジで?
おじさん、絶対私と海なんか行ってくれない。絶対。
だって、疲れるじゃん。疲れるっていうよ、絶対。
日差しとか、海とか、移動とか、
彼ら、疲れちゃうじゃん。私ちゃんと知ってるよ。
知ってるから。
思えば、思春期以前の小学校6年生とか、中学1年生とか、
あの時は、ちゃんとそういうデートができていた気がする。
学校が休みの日に「よみうりランド」に行ったり、水族館に行ったり。
ダブルデートだってしていた。
西野カナも、絢香も、yuiも、聞いていた。HYのNAOで何回も泣いた。
いつからだろう、
別れをLINEで告げるようになったのは。
デートの場所が、家かホテルかレストランになったのは。
夜にしか会えなくなったのは。
ヒール以外履かなくなったのは。
今晩ご飯いらないって母に告げなくなったのは。
yuiを聞くくらいならEDMを聞くようになってしまったのは。
そしてもうそのEDMにすらうんざりするようになってしまったのは。
悲しいなんて思ってないし、辛いとも思ってない。
だってこれが、私の選んだ幸せだからだ。
年上と付き合って誰よりも間違いない幸福感を得る目的のために、海に行く恋愛を捨てた。
アドラー心理学的に言えば、目的論である。間違いない。
でも、なんでだろう、
yuiを聞いてめちゃくちゃエモい気持ちになっちゃったんだよね。
クッソエモかった。マジでバイト中に泣くかと思ったわ。
私だって、ちょっとだけ立ち止まって迷う日もあるし、
凹む毎日だってあるのに。
私は、yuiにはなれない。
やっすいご飯を割り勘して、ユニットバスの部屋でタコパするデートはもう一生できないのかな。
あぁ、したいな。本当はしたいな。
大学サボって、公園にデート行っちゃうみたいな恋愛、本当はしたかったな。
でも、私、知ってる。ちゃんと知ってる。
人間はあまりにも急激に成長すると、ちょっと退行してみたくなる生き物だってことを。
マッチングアプリを使って出会うことが普通となっているこの2018年。普通の出会い方をした途端に「あぁやっぱ出会いは昔ながらの出会い方の方がいいよね〜」とかいってアプリ消す、みたいな。
だから多分、戻ったら戻ったで、もう我慢できないのは目に見えてる。
デートで、大学の友達の噂話なんてしたくないんだよ。
そんなことより、「メルカリまじバケモンだよね」とかそういう話がしたい。
愛してるよみんな。
愛してる。
私のことを愛してくれる良識あるおじさま達へ。