平日の昼間に空を見上げて思ったこと

ここ最近、家に閉じこもっている。

テスト期間だということもある。

テストが100%で判断されるこの学部は、勉強しなくては留年が確定する。

もうバイトをやめてしまったということもある。

以前はどんなに少なくても週に1度は1時間かけてバイト先に向かって、最低6時間はレストランで接客業をしていた。

会いたい人がいなくなってしまったということもある。

会いたい人に会いたいが故に家を出ていた。

家を出なくては会えなかったその人は、今は家を出ても新幹線に乗らなければ会えない場所にいる。

忘れがちだったが、そもそも私は出不精であった。

それを上回る「外に出る理由」が家の外にはたくさんあって、でもそれがなくなってしまった今、家を出る理由がなくなった。

というわけで、ここ最近はもっぱら家に引きこもった生活をしている。

久しぶりに昼間に外に出て見た。

目的はコンビニという引きこもり脱却からは程遠い目的地だったが、

パジャマの上にコートを羽織って、マフラーを巻き、

財布と携帯だけ持って、家の外に出て見た。

明るさに驚いた。

家の中でも外の光は確認できるが、直接当たる日光は、そりゃあもう別格だった。

風が気持ちよかった。

東京に住んでいるが、

都心からは少し離れたこの場所は、至る所に住宅があり、時折畑もある。

どこかで何かを燃やしている匂いがした。とっさに実家を思い出す。

神奈川県の田舎にある私の実家の周りは、よくものを燃やす。

何を燃やしているのかは知らないが、その匂いと同じ匂いが鼻についた。

もっと匂いを嗅ぐように、上を向いて息を飲んだその時に、

空の青さが目についた。

広い。

広い、と思った。

忘れがちだが、空は繋がっていることを思い出す。

どこまでもいける気がした。

このまま、私はどこまでも、

今すぐに、どこにでもいける気がした。

海外旅行が好きな家族で育った。

初めて飛行機に乗ったのは2歳の頃らしい。

話に聞く限りグアム。全く記憶にない。

そこから最低でも年に1回ペースで海外に行き続け、行った国の数は数え切れない。

いや、数えられるか、多分、20ヶ国ぐらい。たぶん。

中高時代には中国に数年住んだ。

この経験が役に立っているのかは知らないが、

「空は繋がっている」ということを思い出す時に、訪れた国のことをよく思い出す。

たしかに、空は繋がっていたのだ。

それでも人は、何度も思い出さないと、何度も忘れてしまう。

ずっと家にいると、まるで世界がここにしかないような感覚に陥ってしまう。

そんなことはないと頭では理解していても、

心が大きく動くことはなく、足が動くこともない。

目の前に置かれた課題が、乗り越えるべき全ての課題だと錯覚してしまう。

本当は、こんなにも世界は広いのに、まるで選択肢が数える程しかないと錯覚してしまう。

選択肢は、数え切れないくらいあるんだよ。

と、すっかり開放的な気分になってコンビニからの帰路を歩いている時、

ふと、最近の女性軽視問題が頭をよぎった。

西武の広告のフェミ感はすごく気持ち悪かったし、何もわかってねぇなと思うと同時に、spaの広告は間違っていると思う。

切り口を色々用意するべきだと思った。

いろんな視点から問題を斬りさばくべきであるし、一言で「昨今のフェミニズム」と言ってもまとめられない。

あぁ、ここも切らなきゃいけないし、あそこからも切りくずさなければいけない。

と、考え始めた途端、ものすごい閉塞感に襲われた。

さっきまで、あんなにも、私はどこにでも飛んでいけると思っていたのに、

途端に、どこにもいけない気分になった。

苦しい、と思った。

もしかしたらそれはたったさっき飲んだカフェイン錠が効きはじめたからかもしれない。それに加えてニコチンを摂取したからかもしれない。

でも、苦しい、と思った。

いやだ、とも思った。

生きづらい世の中であることは、今も昔も変わらないと思う。

何も解決されないまま、それでも人は生きていかなければならないし、

見て見ぬ振りをしなければならないことだってたくさんある。

でも、そんな時は、

また空を見上げて息を吸ってみようと思った。

そしたらまた、

一瞬だけ、あの、かつて訪れた国に飛んでいけるかもしれない。

もしかしたら、やっぱり、いや、確実に。

どこにでもいけると、思うことができるかもしれない。

なんて思った、平日の昼間でした。

ー平日の昼間に空を見上げて思ったことー